うたと映画の分析批評

歌謡曲・詩・映像作品など

シュガー/中島みゆき

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「あたし」の職業は何か。
A ダンサー
B ストリッパー

 

ずっとA だと思っていた。

しかし詳しく見るとB と思えてくる。

 

 

●1番の解釈

故郷にいた若いころに見た映画にあこがれて、ミュージカルダンサーになろうとした。
おそらくはニューヨーク、ロンドンの霧の深い夜に輝くネオンの街で。
しかしその夢は砕けた。

毎晩、スパンコールと羽飾りをつけて踊っている。
だが観客はみんな男。
「ありえないようなお伽の駅」とは、駅のホームのように見える張り出し舞台。
「旅立ってゆく」とは意味深な言葉。
今かなえることができた夢は1度足を上げても57セントのはした金しか稼げない。
「足を上げる」とはおそらく比喩。

57セントだからアメリカにいるのか。

若いころ見ていた夢はかなわず、その成れの果ての夢を今生きている。
もう落ちぶれているのだがまだ夢は見続けているのだと。
幼いころに食べた甘い砂糖菓子の夢をまだ見続けていたいのだ。

でも綱渡りだからいつ落ちるかわからない。
なんとか自分を保って食いつないでいる。

●2番の解釈

深夜3時までに子供を迎えに行く。
託児所か、知り合いか。親ではないようだ。

子供はまだ幼くて、まだ母親が恋しくて夜泣きする。
たぶん男の子。
自分になついてくれない。
でも忙しくて、じゅうぶんに世話をしてやれない。
父親の「あいつ」は自分の仕事を蔑んでいた。
この子も、自分をいつか蔑むようになるのか。

「胸から胸へ」
それ以外の解釈のしようがない。
誰かの胸から誰かの胸へ。
仕事はショーだけではない。
3時に子供を迎えに行くまで。

●3番の解釈

彼女が欲しかったもの。
光った靴。
光ったネックレス。
身を飾る物は手に入れた。
手に入れたい物はもう、満足だ。

でも今思えば、それが欲しかったのではなかった。
「あの人」と暮らす夢はかなわなかった。

今の夢は、着飾ることで、かなえられたと自分に言い聞かせている。
私は二番目の夢はかなえられたと。

●4番の解釈

隣の店。
油を使って調理する店。
中華料理か、てんぷらかとんかつか。
その隣が今いる場所。
たぶん寝床。

歓楽街の中の下宿屋。木賃宿

胸やけがするのは油のにおいだけではない。
酒浸りか。

食欲もわかず、スポンジのように味気のないパンを無理に食べて仕事に出かける。

砂糖菓子を食べている夢見ているはずなのに。
仕事は、極楽なんだ。
パンだからやはりアメリカかもしれない。

「ここからどこへ まだゆける」
今の仕事、暮らし。
この先どうなるんだろう、ではなくて、「まだゆけるだろうか」

強気で自分に言い聞かせて、どこまでいけるのだろうか。

●付記

あるライブのMCで筆者は語っている。

「夢は叶ったほうがいいです。でも叶わない夢もあります。
どうしようもない、形を変えでもしない限りどうにもならない夢、

というものもあります。
だから、どんなに姿かたちを変えながらでも、どんなに傷つきながらでも、

いつかきっと、あなたの夢が叶いますように」